ネーション・オブ・イスラムは、宗教団体である。1930年にウォレス・ファード・ムハマドによってミシガン州デトロイトで設立された。イスラム教国」の主な目的は、アメリカにおける黒人の精神、精神、社会、経済状態を回復させることである。1981年以降、ルイス・ファラカンが率いている。マルコムXもメンバーであった。
歴史の概略
ネーション・オブ・イスラム(Nation of Islam, NOI)は1930年代に創設され、その後の数十年でアメリカの黒人社会に対して強い影響力を持つようになりました。創設者のウォレス・ファード・ムハマドは謎の多い人物で、短期間で組織の基礎を築いた後に姿を消したとされています。1930年代から1975年までエリヤ・ムハンマド(Elijah Muhammad)が実質的な指導者として組織を発展させ、多くの信徒を獲得しました。
1950〜60年代にはマルコムX(後に改名)が著名な活動家として台頭し、ネーション・オブ・イスラムの主張を広めるうえで重要な役割を果たしました。しかし、マルコムXは1964年に組織を離れ、メッカへの巡礼を経て正統スンニ派イスラムに改宗した後に暗殺されました。
エリヤ・ムハンマドの死後、1970年代後半には内部の路線対立が起き、多くの信徒がエリヤの息子ウォレス・ディーン・ムハンマド(Warith Deen Muhammad)とともに伝統的なイスラム教徒(スンニ派)へ移行しました。一方でルイス・ファラカンはネーション・オブ・イスラムの名前を守り、1978年ごろから組織の再建を進め、1980年代以降に公的な指導的立場を確立しました。
教義と目的
ネーション・オブ・イスラムの教えは、伝統的なイスラム教の要素と黒人解放・黒人共同体の自立を強調する黒人ナショナリズムとを融合させた独自の宗教思想です。主な目的や特徴は次のとおりです:
- 黒人の地位向上:教育、経済的自立、精神的再建を通じて黒人コミュニティの復興を図る。
- 自己規律と道徳の重視:薬物やアルコールの排除、家族の結束、礼儀作法や服装の規範化などを推奨する。
- 経済的自立:企業経営や共同体経済の構築を支援し、黒人所有のビジネスや学校を運営することを奨励。
- 宗教実践:礼拝や断食、清潔・飲食の規範など、イスラムに類似する慣行を持つが、教義や宇宙観の一部は正統イスラムとは異なる。
一方で、エリヤ・ムハンマドの教えには独自の人種理論や創世観(例:「ヤクブの理論」など)も含まれ、これらは学界や他宗教から批判を受けることが多い点も特徴です。
組織と活動
ネーション・オブ・イスラムは「テンプル」(モスクに相当する集会所)や学校、ビジネス、社会福祉活動を通じてコミュニティ支援を行ってきました。具体的には:
- 教育プログラムや識字支援、職業訓練
- 食生活や健康改善を目的とした指導(禁酒・禁薬、菜食の奨励など)
- 刑務所での更生支援や再犯防止プログラム
- 経済的相互扶助を目的とした協同組合や企業運営
- 政治的・社会的要求の表明(例:1995年の「Million Man March」など)
影響と批判
ネーション・オブ・イスラムは黒人コミュニティにとって自己肯定感や実践的支援をもたらした一方で、次のような批判や論争も抱えています:
- 人種差別的・排外的発言の指摘:一部の指導者や発言が反ユダヤ主義や人種差別的と批判されることがある。
- 主流イスラムとの相違:教義の一部が正統派イスラム教と相容れないため、イスラム世界からは異端視されることがある。
- 政府の監視・対立:冷戦期などにおいてはFBIなどの監視対象となり、組織と政府との間に緊張が生じた時期があった。
- 内部分裂:指導者の代替わりや路線違いにより、分派や離脱が生じた。
現状と社会的意義
現在もネーション・オブ・イスラムは活動を続けており、ルイス・ファラカンの指導のもとで一定の支持層を保っています。ただし信徒数や影響力は時期によって変動しており、1970年代の大規模な転向や1970〜80年代の再編成などを経て、今日では組織の役割は宗教的側面に加え文化的・社会的運動としての側面が強調されることが多いです。
評価は分かれますが、ネーション・オブ・イスラムが20世紀アメリカにおける黒人の権利意識や自己組織化に与えた影響は無視できません。批判的な側面とともに、教育・経済支援・地域社会の再建といった肯定的な取り組みも行われてきました。
参考:組織の教義や歴史、指導者に関する記述は時代や出典により見解が分かれるため、詳しく調べる場合は複数の資料を参照してください。

