視蓋(上丘)とは|脊椎動物の視覚処理と眼球運動の役割解説
視蓋(上丘)の役割や脊椎動物ごとの視覚処理・眼球運動の違いを図解でわかりやすく解説します。
視蓋は、脊椎動物の中脳を構成する主要な部分である。魚類、爬虫類、鳥類などの脊椎動物では、脳の主要な視覚処理部である。
しかし、哺乳類では、そのほとんどが視覚野で行われています。これは大脳皮質の奥にある。大脳皮質は、視覚の予備的な処理と眼球運動の制御を行います。人体解剖学の教科書で上丘という言葉が使われているのは、この視蓋のことを指しています。図は人体解剖学に基づいています。
用語と概念の整理
視蓋(しがい)は英語で "tectum"、哺乳類における同等の構造は一般に上丘(じょうきゅう、superior colliculus)と呼ばれます。どちらも中脳背側に位置し、視覚情報の処理や視線・頭の向け替え(orienting)を担う中枢です。ただし、役割の比重や入力経路は脊椎動物のグループによって異なります。
構造(層構造)と入力・出力
- 層構造:視蓋/上丘は層状に組織化されています。外側・表層(superficial layers)は主に網膜からの視覚入力や視覚情報処理を受け、深層(deep layers)は複数感覚の統合や運動指令の生成に関わります。
- 入力:網膜、視覚皮質、聴覚や体性感覚の中継核などから入力を受けます。非哺乳類では網膜からの直接入力が特に豊富です。
- 出力:頭部や眼球運動を司る脳幹の運動核、または脊髄や運動系へ投射して、注視や回避行動を素早く引き起こします。さらに視覚皮質や視床(例:プルビナ)へ戻るフィードバック投射もあります。
主な機能:視覚処理と眼球運動
- 視空間マップの保持:視蓋上には網膜像に対応した空間マップが形成され、視界のどの方向に刺激があるかを局在化します。
- 注意と向き直り反応:突然の視覚刺激に対する反射的な注視移動(サッケード)や頭の向け直しを素早く引き起こします。これは捕食・回避など生存行動に重要です。
- 多感覚統合:視覚だけでなく、聴覚や体性感覚情報と統合して刺激の重要性を評価します。これにより視覚情報単独では得られない「どこに何があるか」を決定します。
- 運動の開始と調整:深層は眼球や頭部の運動を誘導する回路と接続し、視線の素早い切り替えや追跡行動に関与します。
脊椎動物間の違い(進化的な観点)
魚類・両生類・爬虫類・鳥類では、視蓋(特に「視蓋核(optic tectum)」)が主要な視覚中枢であり、色・動き・空間位置の処理を担います。鳥類では視蓋が極めて発達し、鋭い視力や高速な目と頭の協調運動を生み出します。
哺乳類では、大脳皮質(特に一次視覚野およびそれに続く高次視覚領域)が視覚処理の中心となりました。その結果、上丘の相対的重要性は低下したものの、上丘は今でも反射的注視、注意の制御、視覚と運動の橋渡しという重要な機能を保持しています。
臨床的意義と研究のポイント
- 上丘やそれに接続する回路が障害されると、突発的な刺激に対する注視反応や反射的な視線移動が損なわれることがあります。人間では前頭眼野や橋網様体などと協働してサッケードを制御しています。
- 視蓋は注意・選択的視覚処理の神経基盤として、注意障害や感覚統合障害の理解に役立つ研究対象です。
- 進化比較の視点から、視蓋の役割や接続がどのように変化してきたかを調べることで、皮質と非皮質性の視覚処理の分業が明らかになります。
まとめ:視蓋(上丘)は中脳に位置する視覚・運動の中枢であり、脊椎動物において視覚情報の空間的把握と迅速な向き直り行動を支える重要な構造です。種によってその比重や機能分担は異なりますが、視覚と行動をつなぐ基本的な回路として普遍的な役割を果たしています。
メカニズム
眼窩の各層には、周囲の世界の地形図が含まれている。地図上のある地点のニューロンが発火すると、空間上の対応する地点に向かって反応を開始する。霊長類では、眼窩(「上丘」)は眼球運動を指令する。網膜からの視覚入力、または大脳皮質からの「指令」入力は、視蓋マップに活動の「バンプ」を作り出す。十分な強度があれば、これが眼球運動を引き起こす。
また、霊長類では、頭の回転、腕を伸ばす運動、運動を伴わない注意の移動の生成にも、眼窩が関与している。その他の種では、歩くラット、泳ぐ魚、飛ぶ鳥の全身回転、カエルの獲物への舌打ち、ヘビの牙打ちなど、様々な反応に眼窩が関与している。
魚類や鳥類など、哺乳類以外の種では、眼窩は脳を構成する最大のものの一つである。哺乳類、特に霊長類では、大脳皮質の大規模な拡張により、眼窩(「上丘」)は脳全体の中でかなり小さな割合に縮小された。それでもなお、眼球運動の主な統合センターであることに変わりはない。
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