タークは、いわゆる機械仕掛けのチェスプレイヤーを装った有名なトリック・オートマトンでした。1770年に初めて公開され、1854年の火災で焼失するまでヨーロッパやアメリカで巡回展示され多くの観客を魅了しました。外見はチェスを指すトルコ人の人形(ターク)と機械仕掛けの箱で構成されており、一見すると完全に自動でチェスを指しているように見えましたが、後にそれがデマであり、内部に人間の操作者が隠されていたことが明らかになりました。
発明の目的と製作者
この装置は、ザ・ヴォルフガング・フォン・ケンペレン(ヴォルフガング-フォン-ケンペレン)によって1770年に製作され、当時のオーストリアの宮廷でマリア-テレジアをはじめとする貴族たちを驚かせるために公開されました。外観・演出は非常に入念で、観客は本物の機械が高度な知能を持っていると信じるよう仕向けられました。
構造と仕組み(概略)
タークの外観はチェス盤を載せた木製の箱と、トルコ風の衣装をまとった人形で構成されていました。箱は複数の引き出しや扉、回転部分などを備えており、観客には内部が複雑な機械で満たされているように見せかけられていました。実際には、箱の中には熟練したチェスプレイヤーが隠れており、巧妙に仕組まれた隠しスペースやスライド式の座席、視覚的な隠蔽を利用して盤上の状況を読み取り、手を動かしていました。操作者は内部のレバーや連結機構を使って人形の腕を操作し、駒を動かすように見せていたと考えられています。
能力と代表的な対局
外見上は人間とフルゲームのチェスができるとされ、さらに盤上のすべての正方形を一度ずつ通るという有名なパズル、すなわち騎士のツアー(ナイトツアー)を実行することさえ可能だと宣伝されました。実際にタークは多くの強豪と対局し、しばしば勝利や引き分けを収めたと報じられています。歴史上の著名な対戦相手としては、ナポレオン・ボナパルトやベンジャミン・フランクリンをはじめとする人物が挙げられ、当時の観衆に強い印象を残しました。
隠されていた操作者たち
箱の中で実際に盤を操作していたのは複数の熟練したチェスプレイヤーで、時代や展示主の変遷に応じて交代していました。知られている操作者には、ヨハン・オールガイア、ヒャシント・アンリ・ボンクール、アーロン・アレクサンドル、ウィリアム・ルイス、ジャック・ムレ、ウィリアム・シュランバーゼーなどが含まれます。彼らは狭い空間で長時間にわたり巧みに観客の目をごまかしつつ対局を行いました。
暴露とその後の影響
当初は本物の機械と信じられていたタークですが、次第に内部に人間がいるという疑いが広まり、研究者や批評家による調査・推理が行われました。最終的にその「機械性」は否定され、タークは大規模な「機械的錯覚」だったと結論づけられています(いわゆる錯覚)。所有者が変わりながら長年にわたって展示され、最終的に1854年、展示中の火災で焼失しました。
タークの話は当時の自動人形や人工知能に関する議論に強い影響を与え、後世の自動機械研究やフィクションにも大きな刺激を与えました。たとえばエドガー・アラン・ポーなどの批評家・作家もタークを題材に論考を書き、機械の「知能」と人間の知性の境界について議論が続きました。今日ではタークは「偽オートマトン(やらせの自動機械)」として歴史的な教訓と興味深いケーススタディを提供しており、自動化と知能の概念を考えるうえで重要な例として扱われています。








