アレクサンドル・ソルジェニーツィン(Aleksandr Solzhenitsyn、1918年12月11日 - 2008年8月3日)は、ロシアの作家であり、1970年のノーベル文学賞受賞者である。冷戦期においてソ連体制の抑圧と強制収容所制度を世界に暴露した作家として国際的な影響力を持ち、ロシア近現代史における重要人物の一人と見なされている。

ソルジェニーツィンは作家としてだけでなく、小説家、劇作家、歴史家としての活動でも知られる。第二次世界大戦中は赤軍の士官として従軍したが、戦後の私的な発言を理由に1945年に逮捕され、強制労働と流刑を受けた。こうした体験は生涯の創作と思想の基礎となり、彼の作品群はソ連の労働収容所(収容所)制度の実態を文学と証言の形で世界に伝えた。

代表作には、強制収容所の体系的な実録と分析を綴った『ザ・ガulag アーキペラゴ』(『The Gulag Archipelago』)や、医療と政治を描いた『がん城』(Cancer Ward)、ソ連の科学者や知識人を扱った『第一の円』(The First Circle)などがあり、その多くはサミズダート(地下出版)や海外出版を通じて広く読まれた。これらの作品は、文学的技法と綿密な事実確認を組み合わせたドキュメンタリー的な筆致で、抑圧体制下の人間の尊厳と道徳的責任を問い続けた。

1970年にノーベル文学賞を受賞したが、当時のソ連当局は国外渡航を許可せず、授賞式に出席できなかった。1973年以降、特に『ザ・ガulag アーキペラゴ』の影響が大きくなると、1974年に当局によって追放され、国外に移住した。亡命先ではヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国(バーモント州など)に滞在し、執筆と講演を続けたが、1994年に帰国しロシアで後半生を過ごした。

思想的には、投獄中の経験を通じてかつてのマルクス主義から離れ、ロシア正教に改宗した。宗教的・道徳的価値の回復と民族文化の尊重を強調し、自由と人間の尊厳を訴える一方で、晩年には国家主義的・保守的な主張を展開したため、評価は賛否両論に分かれる。特に民族や歴史、政治に関するいくつかの論考は論争を呼び、反ユダヤ主義的だとする批判もあったが、支持者はその文脈や意図を巡って弁護している。

2008年8月3日にモスクワで死去(心不全)。死後はロシア国内で大きな反響を呼び、国葬が行われるなど社会的な儀礼が執り行われた。彼の著作と証言は、ソ連体制の人権侵害を世界に知らしめた点で歴史的意義が大きく、冷戦後の歴史認識やロシア国内の言説にも長く影響を与えている。

総じてソルジェニーツィンは、抑圧に対する文学的抵抗と道徳的良心の象徴とみなされる一方で、その後半生の政治的立場や一部の論考に対する批判も存在する、複雑で多面的な作家である。彼の作品は歴史的資料としてだけでなく、文学的・倫理的な問いを投げかけ続ける読み物として今日も読まれている。