エコリージョン(生態学的地域)は、バイオリージョンとも呼ばれ、「レルム」または「エコゾーン」の下位に位置する、生態学的・地理学的に区分された比較的小さい単位です。エコリージョンは比較的広い面積の陸地や水域を含み、それぞれが特徴的で地理的に区分された自然群集や固有種を抱えます。世界自然保護基金(WWF)が定めるエコリージョンの境界は、産業化や開発、外来種などによる最近の大規模な撹乱や変化が起こる前の、自然群集の元来の分布に近づけて設定されています。WWFは地球上に825の陸域エコリージョンと約450の淡水エコリージョンを特定しており、これらは保全計画や生物多様性評価で広く用いられています。

WWFが示すエコリージョンの完全な定義は以下の通りで、国際的に広く受け入れられています。

地理的に異なる自然群集の集合体を含む広大な土地または水域。

(a) 大多数の種と生態学的動態を共有していること。

(b) 似たような環境条件を共有していること。

(c) 長期的な持続性に重要な方法で生態学的に相互作用する。

--世界自然保護基金-エコリージョン

この定義から分かるように、エコリージョンは単に植生や気候だけで区分されるのではなく、そこに住む生物群集の相互作用や進化史、種組成などを総合的に考慮して決められます。エコリージョンは、より大きな「レルム(生物地理学的領域)」や「バイオーム(生物群系)」と連続しつつ、保全管理や資源評価の具体的単位として使いやすいスケールになっています。

分類と区分の背景には、植生パターン・土壌・地形・気候・種組成・歴史的分布などの情報が用いられます。有名な地図化の取り組みとしては、Olsonらによる「Terrestrial Ecoregions of the World」(2001年)などがあり、これを基にWWFのエコリージョン区分は多くの保全活動や研究で参照されています。淡水や海洋についても、淡水エコリージョンや海洋エコリージョン(例:Marine Ecoregions of the World)といった類似の枠組みで区分が行われています。

エコリージョンの実務的な利用例:

  • 保全優先順位の決定(どの地域に保護努力や資源を集中させるか)
  • 保護地域の計画とギャップ分析(現行の保護区がどの程度のエコリージョンをカバーしているか)
  • 生物多様性評価や絶滅危惧種の分布解析
  • 生態系サービスの評価と地域管理(浄水・土壌保全・炭素貯留など)
  • 気候変動に伴う分布変化の予測と適応戦略の検討

エコリージョンごとに直面する脅威は異なり、代表的なものには森林破壊・土地利用変換・過剰な資源採取・外来種の侵入・汚染・気候変動があります。これらの脅威に対して、地域ごとの生態学的特徴に基づいたカスタマイズされた保全対策が必要です。

グローバル200は世界自然保護基金(WWF)が保全の優先事項として特定した生態系のリストです。グローバル200は陸域・淡水・海域の代表的で脆弱なエコリージョンを挙げ、それらを保全の重点対象とすることで地球規模での生物多様性維持を目指しています。選定基準には代表性・固有性・脆弱性・保全価値の高さなどが含まれます。

最後に留意すべき点として、エコリージョンの境界はあくまで便宜的であり、自然界では連続的に変化します。研究の進展や新たな生物地理学的データの出現に伴い、区分や境界の見直しが行われることがあります。保全や管理においては、エコリージョンという概念をガイドラインとして用いつつ、地域の現場情報や社会経済条件とも統合して判断することが重要です。