グールとは、古代アラビアの民話に登場する怪物である。一般にグールは、墓地や廃墟、砂漠などの無人地帯に棲み、人間を襲ってその肉を喰らうとされる。英語の語「ghoul」は、この生物のアラビア語名に由来しており、アラビア語では「悪魔」を意味する「الغول al-ghūl」と表記されることが多い。伝承の中では、ghulはしばしばIblis(イブリース)やその他の邪霊の子孫である、悪魔に近いタイプのジンであると見なされることもある。

女性形は、MuhawiとKanaanaでは「ghouleh」として語られることがあり、複数形は「ghilan」と伝えられる。地域や時代によって細部は変化し、同じ名でも異なる姿や性質が語られるのが特徴である。

外見と習性

Ghoulは伝承の中でしばしば変幻自在の存在とされる。特に以下のような特徴が繰り返し語られる:

  • 砂漠や荒れ地に棲み、旅人を惑わして死に至らせる。
  • 獣(とくにハイエナのような姿)に化ける能力を持つことがある。
  • 幼児をさらったり、墓を暴いて死体をむさぼるなど、肉体への執着が強い。
  • 墓荒らしや死肉嗜好にちなみ、比喩的に「墓荒らし」や「死を好む人」を指す語として転用されることがある。

起源と伝承の展開

グールの起源はアラビア半島の古い口承にさかのぼり、古代アラビアの民話や中世イスラム圏の物語集に断片的に現れる。代表的な散文作品や説話集のなかでは、夜や墓地を舞台にした恐怖譚の敵役として登場することが多い。イスラム教の正典で明確に定義されている存在ではなく、地域ごとの民間信仰や物語の中で形作られてきた存在である。

文化的影響と近代の用法

アラビア語圏以外でも「ghoul(グール)」という語は広く用いられ、西洋のゴシックやホラー文学、現代の大衆文化(小説、映画、テーブルトークRPG、コンピュータゲーム等)に取り入れられている。英語・日本語ともに、比喩的に「死人や残酷なものに執着する者」「墓荒らし」などの否定的な意味で用いられることがある。

また、天文学の固有名にも影響を与え、例えばアルゴル(Algol)の名称は、この生物に由来する語に関わるとされる歴史的な由来を持つ(アルゴルは「鬼の頭」を意味する意訳に由来する説がある)。

まとめ

グールは、アラビア民間伝承に根ざした「墓荒らし・人肉嗜好の怪物」であり、地域や時代によって性質や名称の変化がある。伝承上はしばしばジンや邪霊の一種とされ、砂漠や墓地を舞台に旅人や死者に対する恐怖の象徴として語られてきた。現代においては文学や大衆文化へと影響を及ぼし、実体のある信仰的存在というよりは、死や不潔さへの恐怖を具現化した象徴的なキャラクターとして再解釈されることが多い。