A♭マイナー(変イ短調)は、A♭を主音とする自然短音階で、調号は7つのフラット(B♭, E♭, A♭, D♭, G♭, C♭, F♭)です。
音階の構成(音名はイタリア式ではなく一般的な表記):
- 自然短音階:A♭ – B♭ – C♭ – D♭ – E♭ – F♭ – G♭ – A♭
- 和声的短音階(harmonic minor):A♭ – B♭ – C♭ – D♭ – E♭ – F♭ – G – A♭(第7音が半音上がる)
- 旋律的短音階(melodic minor):上行 A♭ – B♭ – C♭ – D♭ – E♭ – F – G – A♭、下行は自然短音階に戻る
相対長調は変ハ長調(C♭メジャー)、平行長調は変イ長調(A♭メジャー)です。エンハーモニック(等音)な別名は嬰ト短調(G♯マイナー)で、こちらは調号が5つのシャープ(記譜が簡潔)になります。
実際の作曲・編曲では、A♭を主音とする短調は調号にC♭やF♭といった珍しい変化記号が含まれるため、同等の音高を持つエンハーモニックな嬰ト短調で書かれることが多く、結果として楽譜上での変イ短調の採用は稀です。
記譜上の注意点として、7つのフラットを大譜表(グランドスタッフ)に並べると視認性が悪くなるため、スコアによっては低音部の調号の配置を微妙にずらし、Fのフラットを上から2行目に置くなどの特殊な配置を採る場合があります(編集上の便宜によるものです)。
まとめると、A♭マイナー(変イ短調)は理論上は7つのフラットを持つ正規の調ですが、実務的には記譜の簡潔さからエンハーモニックな嬰ト短調が好まれるため、楽譜で見かけることはあまり多くありません。それでも和声・旋律の特徴や響きを明示的に示したい場面では、あえてA♭マイナー表記が用いられることがあります。
