引用符(クォーテーションマーク、逆コンマ、非公式には引用符やスピーチマークとも呼ばれます)は、テキストの一部を発言(スピーチ)、他者の言葉の引用、語句や用語の強調、あるいは慣用的でない語のマーキングなどのために対で用いられる句読点です。一般に開始と終了の2つで1組となり、シングル('…' または ‘…’)とダブル("…" または “…”)の形式があります。

種類と形状

  • 直線(タイプライター)引用符:ASCIIのダブルクォート (") とシングルクォート (')。主にプログラミングや旧式の機器で使われます。
  • カール(曲線)引用符:開始と終了で形が異なる書体的な引用符(例:“ ”、‘ ’)。視覚的に区別しやすくタイポグラフィ上好まれます。書体によっては見え方が変わります。
  • 日本語のかぎ括弧:日本語では「」や『』が引用符として一般的に用いられます。句読点や改行時の扱いが欧文とは異なります。
  • ギュメ(Guillemets):フランス語などで使われる« »や‹ ›。言語ごとに前後にスペースを入れる慣習がある場合があります。

書体とタイポグラフィの違い

タイポグラフィの観点では、開始引用符と終了引用符が形を変えるカールタイプ(スマートクォート)を使うことが推奨される場面が多いです。一方で、コンピュータのソースコードや一部の軽量フォーマットでは直線の引用符(" と ')が標準です。閉じるシングルクォーテーション(’)は外見がアポストロフィと似ているため、混同されがちですが、アポストロフィ(省略や所有格の記号)やプライム記号(′、″)とは用途が異なります。

使い分けとルール(言語別の注意点)

  • 日本語:会話や引用には「」を使い、引用の中の引用には『』を使うのが一般的です。英語のタイトルや外来語を強調するときに欧文引用符を混用することもありますが、統一性を保つ方が読みやすいです。
  • 英語(米国式):ダブルクォート(“”)を主に使用し、内側の引用にシングル(‘’)を使います。句点やカンマは通常引用符の内側に入れます(例:"Hello," she said.)。
  • 英語(英国式):シングルクォートを主に用い、ネストするとダブルを使うことが多いです。句点やカンマの位置は文脈によって外側に置く慣習もあります(例:'Hello', she said.)。
  • フランス語・多くの欧州言語:« »(ギュメ)を使い、前後にノーブレークスペースを置く慣習がある言語もあります。
  • プログラミング・マークアップ:多くの言語で " と ' は文字列リテラルや文字リテラルを区別して使われます。直線の引用符を使うのが標準で、スマートクォートはエラーの原因になります。

ネスト(入れ子)と例

  • 単純な引用(英語・米国式):“She said, ‘I am ready.’”
  • 日本語の入れ子:彼は「田中さんが『行く』と言った」と書いた。
  • プログラミング例(Python):s = "He said, 'Hello'."

スマートクォート、アポストロフィ、プライムの違い

見た目が似ていても用途は異なります。代表的なUnicode文字と用途は次の通りです。

  • U+201C “(LEFT DOUBLE QUOTATION MARK) / U+201D ”(RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK):タイポグラフィ上のダブル引用符。
  • U+2018 ‘(LEFT SINGLE QUOTATION MARK) / U+2019 ’(RIGHT SINGLE QUOTATION MARK):タイポグラフィ上のシングル引用符。U+2019はアポストロフィとしても代用されることが多い。
  • U+0022 "(QUOTATION MARK)および U+0027 '(APOSTROPHE / APOSTROPHE-QUOTE):ASCIIの直線引用符・アポストロフィ。
  • U+2032 ′(PRIME) / U+2033 ″(DOUBLE PRIME):分・秒やフィート・インチなどの単位表示に使われる記号で、引用符とは別物です。

よくある誤りと対策

  • スマートクォートと直線クォートの混在:印刷物やウェブで統一する。ワープロやCMSの自動変換(スマートクォート機能)を確認する。
  • アポストロフィやプライムとの混同:単位や所有格にプライムやアポストロフィが正しいか確認する。
  • 言語ごとの慣習を無視する:文書の対象読者に合わせた引用符を使う。多言語文書では明示的にスタイルを決める。

参考:日本語の引用に使われる「同上マーク(〃)」や定型的な引用の扱いについても注意が必要です。同上マークも参照のこと。