アザリアの祈り」と「三人の聖なる子らの歌」は、ダニエル書の第三章の中にある二つの部分です。これらの部分は、ダニエル書の追加部分と呼ばれることもあります。
ダニエル書三章では、バビロンのネブカドネザル二世が金で彫像を建て、皆にそれを拝むように言います。バビロンに住んでいたアザリア、ハナニヤ、ミサエルというユダヤ人たちは、その像を拝むことを拒否しました。王は怒って、彼らを殺すために大きな炉に入れました。天使が火から彼らを守り、王は彼らを解放することにしました。
この物語はすべてのヘブライ語とキリスト教の聖書にあります。ローマ・カトリック、東方正教、東洋正教の聖書には、この物語の長いバージョンがあります。
この物語の長いバージョンでは、アザリアの祈りは、3人が炉に入れられた後、24節から始まります。祈りの中でアザリアは、自分とユダの人々(古代イスラエルの一部)が神様に対して罪を犯したと言います。アザリアは、そのことを反省し、神様の保護を求めています。
三人の聖なる子の歌は、ダニエル書の長いバージョンのもう一つの部分です。アザリア、ハナニヤ、ダニエルによって歌われており、神を賛美し、他のすべての人にも祈りに加わってほしいと願っています。
由来と写本伝承
「アザリアの祈り」と「三人の聖なる子の歌」(英語では "Prayer of Azariah" と "Song of the Three Holy Children")は、ヘブライ語本文(マソラ本文)には含まれておらず、主にギリシア語のセプトゥアギンタ(LXX)やラテン語ヴルガータを通して知られる附加部分です。古代のギリシア写本や教会の典礼文書にはこれらが保存されており、写本によっては挿入箇所や節の区切りに差異があります。
構成と内容の詳細
- アザリアの祈り:三人が炉の中で火に焼かれそうになる場面で、アザリア(バビロン名での呼称はアベドネゴとは別に、祈りの場面での本来のヘブライ名が用いられることがある)が悔い改めと贖いを神に求めます。祈りは共同体の罪の告白、過去の不忠への認識、神の憐れみと救済の願いを含みます。個人的な救済を超えて、民全体の回復を祈る内容です。
- 三人の聖なる子の歌:この部分は長い賛歌で、天地万物に向かって「主を賛美せよ(Benedicite)」と繰り返し呼びかけます。太陽や月、風や火、山や海、天使や諸国の王など、あらゆるものが神を褒め称えるよう命じられ、宇宙的規模での讃美を描く創造の賛歌です。賛歌は反復句や列挙を多用し、典礼的に歌われることを想定した韻律的な構成になっています。
神学的・典礼的意義
主なテーマは次の通りです:信仰による試練の中での神の救済、共同体の罪と悔い改め、そして創造全体による神の崇拝。この祈りと賛歌は、個人の信仰告白と宇宙的賛美を結びつけ、迫害下でも神への忠実を称揚します。
典礼面では、三人の聖なる子の歌は東方教会の祈祷書や聖務日課に組み込まれているほか、西方教会でも「Benedicite(諸々の造られしものよ、主を讃えよ)」として使われ、聖務や公的な礼拝で歌われることがあります。
訳出と正典化の状況
- カトリック教会と正教会(東方正教・東方諸教会)は、これらの挿入部を正典の一部として受け入れ、聖書に収録しています。
- プロテスタント(特に宗教改革以降の伝統)では、これらはヘブライ語正典に含まれないためしばしば外典(Apocrypha)と扱われ、正典からは除外されることが多いです。ただし、歴史的・文学的資料としては重視され、旧約外典として挿入して掲載する英訳や和訳聖書もあります。
- 聖書本文の節番号や挿入箇所は版によって違いがあり、例えばギリシア語系ではダニエル3章の中に挿入する形で番号付けが行われるのに対し、プロテスタントの伝統的な配列ではそれらは省かれます。
訳読の際の注意点
原資料はギリシア語系の伝承で伝えられてきたため、英訳・和訳ではギリシア語原典に基づいた翻訳が一般的です。訳注では、文言の出典・写本差異・節の取り扱い(挿入として扱うか独立した章とするか)などが示されることが多いです。
簡単な注記(名前と呼称)
原文中に登場するアザリア、ハナニヤ、ミサエルはヘブライ語名で、バビロンで与えられたそれぞれの新名(シャドラク、メシャク、アベドネゴ)と対応します。物語の王は一般にネブカドネザル二世として同定されます。
まとめ
「アザリアの祈り」と「三人の聖なる子の歌」は、炎の炉の物語に深い悔い改めと宇宙的賛美を付け加える重要な挿入です。教派や翻訳によって収録・扱いが異なりますが、信仰の試練に対する応答としての悔い改めと賛美という普遍的なテーマを伝える点で、宗教史的にも文学的にも価値あるテキストです。