『眠れる森の美女』は、プロローグと3幕からなるバレエです。 マリウス・プティパとイワン・フセヴォロジスキーがこのバレエのストーリー(台本)を共同で作り、原作は1697年に出版されたシャルル・ペローの童話森の中の眠り姫」です。音楽はチャイコフスキーが担当し、1888年から1889年にかけて作曲されました。振付の主要部分はマリウス・プティパが手がけ、19世紀末のロシア古典バレエの頂点を示す作品になっています。 あらすじ(簡潔) - プロローグ:王女オーロラの洗礼の場で、祝福の妖精たちが舞う。しかし邪悪な妖精カラボス(Carabosse)が現れ、オーロラに針で刺されて眠りにつくという呪いをかける。ライラックの妖精(Lilac Fairy)が救いの希望を残す。 - 第1幕:十六歳の誕生日の祝宴。オーロラは舞踏会で「ローズ・アダージョ」などの見せ場を持ち、多くの求婚者からの踊りを受けるが、呪いが発動して倒れてしまう。 - 第2幕:時は経ち、王子(デジレ)などが登場。王子は城に入り、呪いの眠りに包まれたオーロラを見出す。城を守る魔力と戦い、王子の愛がオーロラを目覚めさせる。 - 第3幕:目覚めと結婚の祝宴。多彩なディヴェルティスマン(見せ場)が並び、華やかなグランド・パ・ド・ドゥや祝典の場面で幕を閉じる。 音楽と見せ場 チャイコフスキーのスコアは豊かなオーケストレーションと民族的色彩を取り入れた旋律が特徴で、バレエ音楽としての完成度が高く評価されています。特に知られる場面には次のようなものがあります。 - 「ローズ・アダージョ」(第1幕)──オーロラの有名な舞踊場面。技術的にも見栄えのする古典的なヴァリエーション。 - 「青い鳥のパ・ド・ドゥ」(Bluebird)──第3幕の中で人気の高いパ・ド・ドゥ。 - グランド・パ・ド・ドゥやガーランド・ワルツ(Garland Waltz)など、祝典的で色彩感に富んだ楽曲群。 これらの場面は、古典的技巧を見せるための「見せ場」としてバレエ団のレパートリーにおいて重要な位置を占めます。 初演と初期の上演史 1890年1月15日にロシア・サンクトペテルブルクマリインスキー劇場で初演されました。初演キャストにはカルロッタ・ブリアンツァが王女オーロラを、パヴェル・ゲルトが王子を踊り、マリー・プティパがライラックの妖精を、エンリコ・チェケッティがカラボースを演じました。作品はロシア帝国劇場の壮麗な舞台装置・衣裳とともに上演され、当時の古典バレエ様式を代表するものとして受け止められました。 その後の国際的な広がりも早く、ヨーロッパでは短縮版が上演されることが多く、1921年11月2日にはロンドンバレエ・リュスによる短縮版が初演されています。アメリカ合衆国ではキャサリン・リトルフィールドが完全版の舞台を再構成し、1937年2月12日にフィラデルフィア・アカデミー・オブ・ミュージックでフィラデルフィア・バレエ団とともに上演しました。 継承と現在 オリジナルのプティパ振付の細部は時代とともに改変や補完が加えられてきましたが、作品全体の構成とチャイコフスキーの音楽はバレエ史における重要な遺産として現在も各国のバレエ団で上演されています。舞踊技術の見せ場が多く、古典バレエの典型を示す作品として、教育的・鑑賞的に高く評価されています。また、音楽は単独でコンサートや組曲として演奏されることも多く、チャイコフスキーの三大バレエ(『白鳥の湖』『くるみ割り人形』と合わせて)の一つとして親しまれています。 強調しておくと、オリジナル上演に関する人物名や日付、上演地などは上述のとおりで、各地での再演や改訂を通じて現在まで受け継がれてきました。