アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン・リクスバンク経済学賞は、非公式にはノーベル経済学賞と呼ばれ、毎年、経済学の分野で顕著な貢献をした者に贈られる賞である。この賞は、アルフレッド・ノーベルの遺書で定められた賞の一つではありません。受賞者は、物理学、化学生理学または医学、文学の各分野のノーベル賞受賞者と同じ12月10日にストックホルムで行われる授賞式で、スウェーデン君主から賞状と金メダルを授与される。経済学賞の受賞者への授与額も他の賞と同額である。

歴史と設立の背景

この賞はスウェーデン国立銀行(Sveriges Riksbank)が設立したもので、通称「リクスバンク賞」とも呼ばれます。設立は1968年で、スウェーデン国立銀行の創設300周年を記念して創設され、初めての授賞は1969年に行われました。制度上はアルフレッド・ノーベルの遺言による他のノーベル賞と同列扱いで授賞式や形式を共有していますが、設立経緯は別です。賞の運営と選考は主にスウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)が担当しています。

選考と授賞までの流れ

選考は厳格なプロセスを経て行われます。主な流れは次の通りです。

  • ノーミネーション(候補者推薦):学術機関の教授、過去の受賞者、学術アカデミーの会員など、指定された候補者が推薦できる仕組みになっています。
  • 審査と評価:アカデミー内の経済学賞委員会が候補者の業績を評価し、外部の専門家に意見を求めることもあります。
  • 決定と発表:最終候補者は委員会の勧告を受けてアカデミー本体で決定され、例年10月に受賞者が発表されます。
  • 授賞式:受賞者は12月10日にストックホルムで行われる正式な授賞式で、賞状・金メダル・賞金を受け取ります。

ノミネーションの締切や具体的な手続きは年によって若干異なるため、最新の公式情報は王立科学アカデミーの公表資料を参照してください。

受賞対象となる業績の特徴

経済学賞は理論的貢献、実証的な分析、方法論の開発、政策に直接的な影響を与えた応用研究など、幅広い分野の貢献が対象になります。具体例としては、市場のメカニズムの解明、経済成長や景気循環の理論、情報の非対称性の研究、実験的手法や因果推論の手法開発などが挙げられます。

主な受賞者(代表例)

ここでは歴史的に注目された受賞者の一部を年代順に紹介します(代表例)。

  • 1969年:ラグナル・フリッシュ、ヤン・ティンバーゲン(初回受賞者、計量経済学の貢献)
  • 1970年:ポール・サミュエルソン(現代経済学の基礎理論の構築)
  • 1976年:ミルトン・フリードマン(消費理論や貨幣理論への貢献)
  • 1994年:ジョン・ナッシュ(ゲーム理論の均衡概念の発展)
  • 1998年:アマルティア・セン(福祉経済学、人間の発展に関する業績)
  • 2001年:ジョージ・アカロフ、マイケル・スぺンス、ジョセフ・スティグリッツ(情報の経済学)
  • 2009年:エリノア・オストロム(共同資源管理に関する実証的研究、初の女性受賞者の一人)
  • 2010年:ピーター・ダイアモンド、デール・モーテンセン、クリストファー・ピサリデス(労働市場の摩擦など)
  • 2013年:ユージン・ファーマ、ラーシュ・ピーター・ハンセン、ロバート・シラー(資産価格や計量経済学の手法)
  • 2014年:ジャン・ティロール(産業組織論と規制政策への貢献)
  • 2019年:アビジット・バナジー、エスター・デュフロ、マイケル・クレマー(貧困削減のための実験的アプローチ)
  • 2020年:ポール・ミルグロム、ロバート・ウィルソン(オークション理論と実務)
  • 2021年:デヴィッド・カード、ジョシュア・アングリスト、グイド・インベンス(労働経済学と因果推論の方法論)
  • 2023年:クラウディア・ゴルディン(労働経済学における女性の労働参画と賃金格差の歴史的分析)

意義と批判

ノーベル経済学賞は経済学分野で最も権威のある賞の一つであり、受賞は研究の影響力を世界的に認められる重要な指標になります。一方で次のような批判もあります。

  • ノーベルの遺言には経済学賞の創設はないことから、賞の「正統性」を問う声がある。
  • 受賞者の偏り(例えば性別や地域の偏り)が指摘されており、女性受賞者が非常に少ないことが問題視されてきました。
  • 経済学は政治的・価値判断が絡みやすく、受賞の社会的影響や解釈を巡って議論が起こることがある。

さらに情報を得るには

最新の受賞者や授賞理由、ノーミネーション方法などの公式情報は、スウェーデン王立科学アカデミーやスウェーデン国立銀行の発表で確認できます。学術的な解説や受賞業績の和訳解説も多く出ていますので、関心のあるテーマに応じて専門書やレビュー論文を参照すると理解が深まります。