ルル』は、作曲家アルバン・ベルクのオペラである。ベルクは、ドイツの劇作家フランク・ヴェーデキントの「Erdgeist」と「Die Büchse des Pandora」という2つの戯曲を題材に、ストーリーを作り上げました。ベルクはリブレット(オペラの台詞)を自分で書きました。作品は三幕構成を念頭に置いて作曲され、ベルク自身は第1幕と第2幕を完成させましたが、第3幕は短いスコア(ショートスコア)のまま残され、彼が亡くなった後に未完のままとなりました。
あらすじと登場人物(概略)
ルルの中心にいるのは魅力的で破滅的な女性ルル(Lulu)で、彼女をめぐる男たちや社会の人々が次第に破滅へと導かれていきます。物語には次のような主要人物が登場します:
- ルル:魅力と危険を併せ持つ女性。周囲の人々の運命を狂わせる存在。
- ドクター・シェーン(Dr. Schön):新聞社の有力者で、ルルの運命に深く関わる男。
- アルヴァ(Alwa):シェーンの息子で、ルルと複雑な関係になる若者。
- ゲシュヴィッツ伯爵夫人(Countess Geschwitz):ルルに深い愛情を寄せる女性で、物語全体の重要な対照を成す存在。
物語は、性愛、暴力、殺人、階級や権力の腐敗といったテーマを通じて、人間の退廃と社会的崩壊を描きます。多くの観客にとって作品が衝撃的なのは、この容赦ない描写と道徳的な曖昧さのためです。
作曲と上演史(要点)
ベルクは作曲にあたり、当時の音楽語法である12音技法を採り入れつつも、伝統的な和声やロマン派的表現を取り込むことで独自の語法を築きました(下記「音楽的特徴」参照)。しかしベルクが1935年に急逝したため、第3幕は完成せず、長らく完結版の上演は叶いませんでした。
戦間期から第二次世界大戦期にかけては、ナチス政権によって「退廃芸術(Entartete Kunst)」とされたため上演が妨げられたり禁止されたりしました。その後、作曲家フリードリヒ・チェルハ(Friedrich Cerha)が第3幕のオーケストレーションと補筆を行い、ベルクの短いスコアをもとに全幕版が復元され、20世紀後半になってようやく完全版として上演されるようになりました。こうした経緯から、完成版の初演はベルク没後かなり経ってから行われ、今日では20世紀の重要なオペラの一つと見なされています。
音楽的特徴
多くの人が『ルル』をとても衝撃的だと感じたのは、ストーリーがとても退廃的だからです。血、殺人、セックス、暴力がたくさん出てきます。またベルクの音楽はかなり難解でした。彼は12音音楽を使い、特定の調にこだわらないが、それを使って、しばしば非常にロマンティックで表現豊かな音楽のスタイルを作っている。
補足すると、ベルクは12音技法を冷たい抽象法としてではなく、感情表現や登場人物の個性を際立たせる道具として用いました。作品中には:
- 登場人物や状況を示す動機(ライプモティーフ)的扱い
- 半音階的/和声的に豊かな管弦楽法と、室内楽的な扱いを併用した多彩な編成
- ワルツや唱歌、労働歌などトーンの異なる引用や回想を通じた〈古典的/大衆的〉な要素の挿入
これらにより、ベルクの音楽は厳密な序列と強い感情表現を同時に実現し、聴衆には時に辛辣で、また時に深い共感を呼び起こすものとなっています。
主題と評価
ルルは単なるセンセーショナルな物語以上のものを提示します。性と権力、欲望と社会的抑圧、そして個人と群衆の関係といった普遍的なテーマが精緻な音楽と劇的構成を通じて問い直されます。これらの要素が重なり合うことで、作品は20世紀オペラの中でも特に深い思想性と音楽的革新性を併せ持つ作品として評価されています。
現在では、舞台芸術としても音楽史的にも高い評価を受け、上演のたびに新たな解釈や演出が試みられる代表的なモダン・オペラの一つになっています。