スペルターと呼ばれることもある亜鉛は、化学元素のひとつで、周期表上の記号は「Zn」。亜鉛は30番目の元素で、原子番号は30、原子量は約65.38です。電子配置は[Ar] 3d10 4s2で、常に30個の陽子と30個の電子を持ちます。結晶構造は六方最密充填(hcp)で、見た目は青白い光沢のある金属です。

分類と性質

亜鉛はしばしば遷移金属に含められることもありますが、3d殻が満たされているためポストトランジションメタル(後期遷移金属)として扱われることが一般的です。主な化学的性質は次の通りです:

  • 比重:約7.14 g/cm3
  • 融点:419.53 °C、沸点:約907 °C
  • 代表的な酸化数:+2(Zn2+ が最も安定)
  • 空気中では表面に酸化被膜(ZnO)を形成し、腐食を遅らせる性質がある
  • 常温ではやや脆いが、約100–150 °Cで可塑性が増し加工しやすくなる

同位体

亜鉛には全部で約29種類の同位体が知られており、そのうち5種類(64、66、67、68、70)が自然界に存在する安定同位体です。放射性同位体も多数合成されており、代表的なものとしてはZn‑65(半減期約244.26日)があり、研究やトレーサー用途に用いられます。極端に不安定な同位体は半減期がミリ秒程度のものもあります。

鉱石と製錬

主な亜鉛鉱石は閃亜鉛鉱(スファレライト:ZnS)で、これを焙焼して酸化亜鉛(ZnO)に変え、さらに還元または電解精錬によって金属亜鉛を得ます。製錬方法としては高炉還元法の他、湿式法(浮選→浸出→電解精製)も広く用いられています。

用途

亜鉛は工業的に極めて重要な金属で、用途は多岐にわたります。主な用途は以下の通りです:

  • 亜鉛メッキ( galvanizing):鉄や鋼の防錆処理として最も一般的。屋外構造物や自動車部品に広く使用。
  • 合金:真鍮(銅+亜鉛)やダイキャスト用亜鉛合金(亜鉛‑アルミニウム合金など)。
  • 電池:亜鉛は乾電池(亜鉛‑炭素電池、アルカリ電池など)や亜鉛空気電池に使用。
  • 酸化亜鉛(ZnO):ゴム加硫促進、顔料(亜鉛白)、化粧品(UV防御)や医薬品、殺菌剤として利用。
  • 硫化亜鉛(ZnS):蛍光体や蛍光塗料に使用。
  • その他:肥料や飼料の微量栄養素、触媒、めっき用フラックスなど。

生物学的役割と安全性

亜鉛は人間や多くの生物にとって必須の微量元素で、数百種の酵素(例:カルボニックアンヒドラーゼ)やDNA結合タンパク質(ジンクフィンガー)に含まれ、生体内で重要な役割を果たします。亜鉛欠乏は味覚障害、免疫機能低下、成長遅延などを引き起こします。一方で大量摂取は消化器症状や銅欠乏を招くことがあり、亜鉛酸化物の煙を吸入すると金属ふんしょう(metal fume fever)を生じることがあります。

環境とリサイクル

亜鉛めっき製品や亜鉛合金はリサイクルが比較的容易で、スクラップからの回収が盛んです。主要生産国は中国、ペルー、オーストラリアなどで、工業的に重要かつ需要の高い素材です。

歴史メモ

亜鉛自体は古代から利用されてきましたが、純粋な金属として精錬され始めたのは中世以降です。日本語の「スペルター」は英語の「spelter(芳ばしい亜鉛塊や鋳物用亜鉛)」に由来する呼称で、亜鉛そのものや亜鉛の鋳塊を指すことがあります。

まとめると、亜鉛は記号がZn、原子番号30の重要な金属元素で、化学的性質、同位体、製錬法、用途、生物学的役割において幅広い分野で利用されています。工業・医療・生物学の各分野で不可欠な元素です。