障害を持つアメリカ人法」ADA)は、1990年に米国議会で可決された法律です。1990年7月26日、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領がADAに署名し、米国の正式な法律となりました。その後、ジョージ・W・ブッシュ大統領はADAを修正(変更)し、その変更内容に署名して法律を制定しました。この変更は2009年1月1日に開始されました。

ADAは、障害者を差別から守ることを目的とした詳細な公民権法です。ADA以前は、障害者が法的に保護されることはあまりありませんでした。1964年、公民権法(Civil Rights Act of 1964)が制定されました。この法律では、人種宗教性別、国籍(出身国)など、さまざまな理由で人を差別することが違法とされました。しかし、障害者は1964年の公民権法に含まれておらず、保護されていませんでした。ADAは、公民権法の保護とその他の保護を障害者に与えました。

ADAの主な構成(タイトル)

  • Title I(雇用):雇用者は、障害を理由とする差別をしてはならず、応募や雇用、昇進の機会に関する均等な扱いを求められます。雇用者は、業務の本質を損なわない範囲での合理的配慮(reasonable accommodation)を提供する必要があります(例:勤務時間の柔軟化、設備の改造、補助機器の提供)。
  • Title II(州・地方政府):州や地方自治体(公共交通機関や役所など)は、障害者に対してサービスやプログラムを差別なく提供しなければなりません。Olmstead v. L.C.の判例のように、不当に施設に隔離することは差別とされます。
  • Title III(民間の公衆利用施設):ホテル、レストラン、劇場、病院、店舗などの民間事業者は、アクセス可能な施設の提供や、必要な変更を行う義務があります。新築や改築ではADAアクセシブル基準に従う必要があります。
  • Title IV(電気通信):電話事業者等は、聴覚や発話に障害のある人が通信サービスを利用できるように適切な設備やサービス(例:テキスト通信、リアルタイム文字通訳など)を提供する必要があります。
  • Title V(雑則):執行や連邦政府との関係、その他の一般規定を含みます。

重要な改正――ADA Amendments Act(ADAAA)

2008年に成立したADA Amendments Act(通称ADAAA)は、いくつかの連邦最高裁判所の判決で「障害」の定義が狭く解釈されたことへの対処として行われ、2009年1月1日に発効しました。ADAAAは「障害」の範囲を広げることを目的とし、重篤な疾病や機能障害のみならず、日常生活の重要な活動(移動、視力、聴力、学習、働くことなど)を著しく制限する状態も含まれることを明確にしました。

重要な定義と概念

  • 障害(disability):身体的または精神的な状態で、主要な生活活動(major life activities)に実質的な制限を与えるもの。ADAAAにより、定義は広められました。
  • 合理的配慮(reasonable accommodation):雇用やサービス利用において、障害のある人が平等に参加できるように行う変更や調整。ただし、事業者にとって過度の負担(undue hardship)であれば要求されません。
  • 正当な理由のない差別(disparate treatment):障害を理由に不利な扱いをすること。
  • 合理的な変更(reasonable modification):施設やポリシーの変更で、障害者がサービスを受けられるようにする措置(例:入口の段差解消、ウェブサイトのアクセシビリティ改善、手話通訳の手配)。

具体例(現場での対応)

  • 車椅子利用者のためにスロープや幅広い扉を設置する。
  • 聴覚障害のあるお客様に対して手話通訳や筆記での対応を提供する。
  • 精神疾患のある従業員に対して休憩時間や勤務形態の変更を行う。
  • ウェブサイトやモバイルアプリをスクリーンリーダー対応にする(公的機関・民間ともに重要)。

執行と救済

雇用関連の苦情は通常、Equal Employment Opportunity Commission(EEOC)に申し立てを行い、そこから調停や訴訟に進むことになります。公衆施設や州・地方政府に対する差別は、米国司法省(DOJ)が執行する場合があります。救済は差別の停止(差止命令)や補償金、弁護士費用の支払いなどが含まれることがあります。なお、申立ての期限(時効)はケースや管轄によって異なるため、早めの行動が重要です。

関連の裁判例と影響

  • Olmstead v. L.C.(1999年)では、正当な理由なく障害者を施設に隔離することは差別に当たると判断され、地域での支援サービス提供の重要性が確認されました。
  • 一部の最高裁判決により「障害」の解釈が狭められた結果、ADAAAが制定され、法の保護範囲が拡大されました。

相談・支援を受けるには

  • 雇用に関する問題はEEOC(早期に申し立て)へ相談する。
  • 公衆施設や州・地方政府に関する問題はDOJや州の障害者権利団体へ相談する。
  • 地域の障害者支援団体や法律相談を利用すると、合理的配慮の具体的手続きや証拠の整え方について助言が得られます。

ADAは、障害のある人々が社会生活や労働の場で平等に参加できることを目的とした包括的な法律です。制度や解釈は変化することがあるため、具体的な問題がある場合は専門機関や弁護士に相談することをおすすめします。