概要
国連開発計画(UNDP)が公表した人間開発報告書(2011年11月2日発表、2011年の推計値に基づく)では、世界の国・地域の人間開発の状況がまとめられています。本報告は、国連加盟国185カ国(193カ国中)に加えて、香港(中華人民共和国)とパレスチナ自治区を対象としており、8カ国の国連加盟国はデータ不足のため集計に含まれていません。比較のために、世界の地域や国のグループごとの平均HDIも掲載されています。
人間開発指数(HDI)とは
人間開発指数(HDI)は、国民一人ひとりの「長く健康な生活」「知識を得ること」「生活水準」の3つの次元を統合して測る複合指標です。2010年以降の算出方法では、次の3つの構成要素を用いて単純平均をとる形でHDIが計算されます。
- 健康:平均寿命(寿命指標:平均寿命)
- 教育:教育指標(成人の平均就学年数(Mean years of schooling)と児童・生徒の期待就学年数(Expected years of schooling)を組み合わせて算出)
- 生活水準:一人当たりの国民総所得(GNI)を購買力平価(PPP)に換算した値(対数変換を行って指標化)
この考え方は、国家の経済指標だけでなく、個々人の健康や教育などの実際の生活の質を重視するもので、パキスタンの経済学者Mahbubul Haq(マフブーブ・ウル・ハク)とインドの経済学者Amartya Senによって1990年に提唱されました。
分類と閾値(2011年報告に基づく)
HDIの値に基づき、各国は4つの人間開発カテゴリーに分類されます(2011年推計時点の分類)。各カテゴリーの閾値はおおむね次の通りです:
- 非常に高い人間開発(Very high):HDI 0.800 以上
- 高い人間開発(High):HDI 0.700–0.799
- 中程度の人間開発(Medium):HDI 0.500–0.699
- 低い人間開発(Low):HDI 0.500 未満
2011年の推計では、対象となった187の国と地域は次のように配分されており、各カテゴリーの国数はほぼ均等です:非常に高い(47カ国)、高い(47カ国)、中程度(47カ国)、低い(46カ国)。
報告書の見方と注記
過去の報告では、「高い」「非常に高い」などの上位2カテゴリを総称して先進国、「中程度」「低い」カテゴリを発展途上国と呼ぶ便宜的なグルーピングが用いられることがありました。しかし、HDI自体は二分法的な分類ではなく、各国の相対的な人間開発の度合いを示す連続値として解釈するのが適切です。また、以前用いられていた「高・中・低所得国」のようなグループ分けは、一人当たりの購買力平価(PPP)ベースの国内総生産(GDP)に依存していたため、近年は一人当たりの購買力平価に換算した国民総所得(GNI)など、より適切とみなされる指標へと方針が変更・補完されています。
2011年推計における主な動向
- 1998年以降でHDIが最も大きく低下した国はジンバブエで、1998年の0.514から2010年には0.140へと著しい低下を示しています。これは社会・経済の深刻な混乱と保健・生活水準の悪化を反映しています。
- 短期的な変化では、2009年以降に最も大きくHDIを下げた国の一つにカーボベルデ(カーボベルデ)があり、報告では0.170ポイント程度の減少が報告されています。
- 世界人口の分布では、世界人口の半数以上(約51%)が「中程度の人間開発」の国に居住している一方で、「低い人間開発」の国に住む人口は約18%に過ぎません。「高い」から「非常に高い」カテゴリに住む人々は全世界の約30%とされています。
利用と限界・関連指標
利用:HDIは国や地域間の比較、政策評価、開発目標の設定や進捗管理などに広く用いられます。単一の指標で生活の複数側面を把握できるため、国際機関や研究者、政策立案者にとって便利な指標です。
限界:HDIは平均値を基にしているため、国内の不平等や地域差、特定の脆弱集団の状況を必ずしも反映しません。また、指標に含まれる項目や算出方法によって国間比較にバイアスが入り得ます。
こうした限界に対応するために、UNDPは不平等を調整した人間開発指数(IHDI)や複合貧困指標(MPI)など、より細分化・補完的な指標も同時に公表しています。これらを併せて見ることで、より実態に即した分析が可能になります。
まとめ
人間開発指数(HDI)は、寿命・教育・生活水準を統合して国の「生活の質」を可視化する指標であり、2011年のUNDP推計では187の国・地域を4つのカテゴリに分類しています。数値そのものだけでなく、不平等調整や多面的な貧困指標とも併せて読み解くことが重要です。
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