聖書のとは、聖書のさまざまな部分(書)を指します。それぞれの書には固有の名前があり、多くはその書を書いた人物や取り扱う主題にちなんで名づけられています。ただし、必ずしも著者名がそのまま書名になるとは限りません。さらに、宗教やキリスト教内の教派によって、どの書を「正典(カノン)」として受け入れるかに違いがあり、同じ書に対して別の名前を用いることもあります。内容上の物語や教えは多くのグループで類似していますが、採録される書の範囲や順序が異なるため、版によって収録書目は変わります。暗記や学習のために工夫(分割して覚える、歌や図を使うなど)をする人もいます。

比較対象となる宗派と一覧表について

以下に、ユダヤ教カトリック、プロテスタント、ギリシャ正教、スラブ正教、グルジア教会、アルメニア教会、シリア教会、エチオピア教会の聖書の書を比較した一覧や表があります。この表は旧約聖書と新約聖書の両方をカバーしており、各宗派がどの書を正典として認めているかを示しています。違いについての詳しい議論は、聖書のカノンの項目をご参照ください。

宗派別に見た主な違い(概要)

  • ユダヤ教(タナク):ヘブライ語聖典(タナク)は、旧約に相当する39巻(ヘブライ語の配列・区分に基づく)を正典とします。原典は主にヘブライ語・一部アラム語で書かれています。
  • プロテスタント:旧約はユダヤ教のタナク(39書)を基本とし、新約は共通の27書を採用します。多くのプロテスタント版では、カトリックが含める「第二正典(外典・申命外書、deuterocanonical)」を正典から除き、必要に応じて「アポクリファ(外典)」として別に収録することがあります。
  • ローマ・カトリック:旧約においてプロテスタントよりも多く(計46書に相当)の書を正典に含めます。これにはトビト記、ユディト記、知恵の書、シラ書(エクレシアスティクス)、バルク書、マカバイ記(第1・第2)など、いわゆる「第二正典」が含まれます。新約はプロテスタントと同じ27書です。
  • 東方正教会(ギリシャ正教・スラブ正教など)および東方カトリック:カトリックの第二正典を受け入れるだけでなく、さらにいくつかの外典的書(詩篇151、マナセの祈り、3・4マカバイ記、第三エズラなど)を伝統的に重視する教会もあります。地域や典礼伝統により採録に差があります。
  • オリエント正教会(アルメニア、シリア、エチオピアなど):それぞれ独自の伝承に基づき、特有の書(例:エチオピア正教会では『エノク書』『ユビレア書』『メカビアン書』等が広く使われる)を伝統的に用いることがあります。

旧約での具体的な相違例(代表的な書)

宗派間で正典に含まれるかどうかで差が出やすい代表的な書(日本語名の一例)を挙げます。

  • プロテスタントに含まれるがカトリック・正教で扱いが異なる例:なし(プロテスタントはユダヤ教タナク準拠)。
  • カトリックで正典に含まれる「第二正典」の例:トビト記、ユディト記、知恵の書(ソロモンの知恵)、シラ書(ベン・シラの知恵)、バルク書、第一・第二マカバイ記、エステル書・ダニエル書の付加部分(たとえばスザンナ、ベルと竜、三人の歌と祈りなど)。
  • 正教会で伝統的に重視される追加書の例:詩篇151、マナセの祈り、第一エズラ(1エズラ)、第三・第四マカバイ記など(教会ごとに異なる)。
  • エチオピア正教会で独自に重要視される書:エノク書(エチオピク語聖書群に含まれる)、ユビレア書、メカビアン(1–3 Meqabyan)など。

新約聖書について

新約聖書は、現在ほとんどのキリスト教諸派で27書が正典として共通に受け入れられています(福音書4巻、使徒行伝、パウロ書簡その他の使徒書簡、黙示録など)。新約に関しては、宗派間の書目の差はほとんどありません。ただし、書の順序、注記・見出しの有無、典礼での用法などに違いが見られます。

なぜカノン(正典)が異なるのか — 決定基準と歴史的背景

  • 伝承と受容(catholicity):その書が広範に教会で読まれ、礼拝や教理形成に用いられてきたか。
  • 使徒性(apostolicity):新約では使徒に由来するか、あるいは使徒の教えに一致しているかが重視された。
  • 正統性(orthodoxy):教会の中心的教義と整合するかどうか。
  • 古さと原典性:古代の信頼できる写本や引用の有無、言語(ヘブライ語・アラム語・ギリシャ語など)も影響しました。特に旧約では、ギリシャ語訳セプトゥアギンタ(LXX)を基にする教会と、ヘブライ語マソラ本文を基にするユダヤ・プロテスタントの違いが重要です。
  • 地域的・文化的要因:典礼や教会会議、教父たちの見解が地域ごとの採用に影響しました(例えばカルタゴ公会議、トレド会議、ローマ教会の公的決定、東方教会の伝承など)。

実用上の差(翻訳・典礼・学術)

  • 聖書の翻訳版や出版物では、宗派に応じて収録書目が異なり、注記で「外典」「第二正典」として区別されることがあります。
  • 典礼で読む箇所や日課聖書(レクティオ・デイ)で使う書が宗派ごとに異なるため、実際の信仰生活で触れる書の頻度も変わります。
  • 学術研究では、どの写本伝承を基準にするか(セプトゥアギンタかマソラ本文か)によって旧約学の解釈や年代観が変わることがあります。

覚え方・学習のコツ(簡単なヒント)

  • 全書名を一気に覚えるのではなく、まとまり(律法書、歴史書、詩篇・知恵文学、預言書、福音書、使徒書簡など)ごとに分けて覚える。
  • 歌やリズム、語呂合わせを使う。子供向けの歌や詩で順序を覚える方法は現在でも有効です。
  • チャートや系図、タイムラインを作って、書の成り立ちや時代背景と結びつけて理解する。図解で覚えると定着しやすいです。
  • 実際に礼拝や読書計画に取り入れて、繰り返し読むことで自然に記憶されます。

なお、東方正教会や東方カトリック、オリエント正教会など、同じ「東方」と名のつく教会でも典礼伝承や採用する書目に違いがあるため、地域ごとの詳細を確認することが重要です。表や一覧は便宜上、少なくとも一つの東方教会がある書を含めていますが、採録の実情は教会ごとに異なります。